「王育徳紀念館」開館の御案内

INFORMATION

2018-08-11

2年前に着工された「王育徳紀念館」が2018年9月9日開館の運びとなる。

場所は市内の台南公会堂のある呉園という名園の中である。台南市文化局の英断で、池の畔の建造物がこれにあてられた。

(写真は台南市文化局提供)

 

この場所は王育徳の生家から歩いて数分の位置にある。開館式は10時50分から、呉園の中の野外劇場で行われ、市長時代に王育徳紀念館の設立を決めた頼清徳行政院長が来賓として出席する予定である。開館式に先立って、10時半より生家のあった場所で「故居」のプレートの除幕式が行われる。

紀念館の内部は、5部屋に分けられていて、生い立ちや人生、業績などを展示する第一室に続き、第二室・台湾語研究、第三室・台湾独立運動、第四室・台湾人元日本兵士の補償請求運動、第五室・東京の書斎の復元という設計である。展示説明は全て、中国語と日本語が併記されているが、第二室だけは王育徳の遺志を尊重して台湾語表記を併用している。紀念館の内容は、単なる個人の記録にとどまらず、戦前・戦後を通しての日本と台湾の関係性も表わすものとなっている。

王育徳の紹介

王育徳が生まれたのは1924年、日本統治下の台湾であった。少年時代から、兄王育霖と「将来は台湾の為に役に立つ人間になろう」と誓い合い、共に東京帝国大学に進学したが、終戦後、中国国民党の占領により、多くの台湾人同様に思いがけない悲運に見舞われた。

検事であった育霖は228事件の犠牲者となり、命の危険の迫った育徳は1949年、25歳で日本へ亡命。日本で自由を得た育徳は、愛する故郷の為に、でき得る限りのことをするという責任を自らに課し、一生を台湾の為に捧げたのである。それは台湾語の研究、台湾独立運動、台湾文学の研究、台湾人元日本兵士の補償請求運動など、多岐にわたるものであった。

1960年に黄昭堂氏らと立ち上げた「台湾青年社」は日本における台湾独立運動の拠点となり、やがて、世界的な組織となる台湾独立建国聯盟へと発展し、今日に至る。

王育徳は台湾の人々が幸せに民主的に暮らせる社会の実現を願っていたが、それ故に、国民党政府のブラックリストに名を連ねることになり、一度も帰国できぬまま1985年、亡命先の日本で亡くなった。享年61であった。そして、この度、亡くなって33年目の命日に、晴れて故郷への帰国を果たすこととなったのである。

 

王育徳紀念館

開館日:毎週 水・木・金・土・日

休館日:毎週月曜と火曜 及び 年末

時間: 9:00 am~5:00 pm

入場料:無料

・呉園入口には日本時代に建てられた台南公会堂が有り、バロック建築と日本の瓦屋根構造が併用された美しい建物は保存され、一部内覧できる。

・呉園内には日本時代の料亭「柳」をリノベーションした喫茶店もある。